ことこのことに関して、僕は大和家代々の掟と、妻の実際しか知らない。世間はどのようにしているのかしていないのか、統計でも見てみたい。
 と言うのは、大和家代々の躾では、階段に物は置かない。幼い時にでも階段に物を置いたりしたらよく怒られた。よく怒られたのに誰に怒られたのかは不思議と思い出せないのだ。と言うことは祖父母、両親、ひょとしたら姉たちにも怒られていたのかもしれない。とにかく我が家では階段に物を置くのはご法度だった。かすかに覚えているのは「危ないから」と言う理由だと思う。
 この「危ない」が最近特に気になりだして、妻が階段を物置のように使うのが恐ろしくなってきている。昔から同じだが最近とみにそれが気になりだした。僕自身が若い時にはそんなに気にならなかったが、子供たちが幼いころをを除いては、今が一番恐ろしい。今は僕が一番の被害者になりそうだ。上がる時には物をよけて上がればいいだけだが、降りるときは滑るか躓くかで、そのまま大怪我直行みたいで、手すりをついしっかり持ってしまう。もっとも手すりなしでは降りられないくらい、物が置かれている。中にはビニール袋の残渣みたいなものもあるから、夜など特に怖い。
 つい最近も気を付けてと頼んだが、気にならないみたいだから、幼い時にそういった躾を受けていないのだと思う。だから僕のお願が不思議なのだろう。僕がフランス語で話しかけられるくらい、意味不明なのだろう。お願いしてもあれだけ堂々と物を置かれたら、日本中で我が家だけの掟だったのだろうかと、絶滅危惧種なみのこころもとなさだ。
 おじいちゃん、おばあちゃん、おとうさん、おかあさん、ごめんなさい。