考え事

 大柄な青年が体を小さくして薬局に入るなり「すいませんでした、考え事をしていました」と謝った。
 当方は別に謝ってもらうほどではないから「国の将来について考えていたんだろう」と冗談で返すと「そうなんです。この国がどうなるか考えていたんです。総裁は決まったんですか?」と安心した様子でこちらの路線に乗ってきた。
 天下のクロネコの運転手がどんな考えを持っているのか知りたくてカマをかけてみた。「スカがなったりしたら、汚部の悪事を隠すから最悪じゃ」と言うと「説明責任を果たさないですものね」と常識的な言葉が返ってきた。その程度の意識はあるんだと思ったので「カスじゃないと、汚部が捕まるから、カス以外にあり得ないだろう」と言うと、「仲間ですもんね」と結構若い人でもわかっているのだと思った。
 彼が謝ったのは、漢方薬の集荷に来た時に半分の荷物をまずトラックに運んで、そのあとの半分を忘れて行ってしまったことだ。取りに戻るのかと思ったらそのまま行ってしまった。とても珍しいと言うか初めてのことだ。どんないいことを考えていたのかその逆か分からないが、何はともあれ運転中でなくてよかったし、ヤマト薬局での出来事でよかった。