箱根マラソン

箱根マラソンをもう何年も見ていないが、後日ワイドショーに選手達が出て話しているのを偶然見た。そこで一つだけとても参考になるコメントを聞いた。
 ある選手が、前夜緊張状態で一睡も出来なかったそうだ。ところが彼は普段どおりに、いやそれ以上に実力を発揮してよい成績を残しチームの優勝に貢献した。彼のコメントを聞いていて僕は自身が患者さんに言い続けていることの正しさを再確認できた。と言うのは、僕が属していた漢方研究会で、もう20年以上前になるだろうか、僕の先生から「睡眠は何も覚えていない時間が2時間、横になっているのが6時間あればいい。頭は2時間で回復し、肉体は6時間で回復する。日本人が実際に苦しんでいるのは、眠れなかったことではなく、寝ていないかもしれない病だ」と教えていただいた。おまけに「寝れなくて死んだものは一人もいない」とも教えていただいた。この言葉を金科玉条にして現場で指導しているが、まさに一睡もせずに20kmも走ることができる事実こそがその言葉を証明してくれている。 
 北海道医療センターの上村先生によると、エチゾラムデパス)、トリアゾラムハルシオン)、フルニトラゼパムサイレース)が止められないというのは、アルコール、違法薬物、覚醒剤と同じく物質依存症に罹患してしまっていることが最大の理由らしい。いくら依存の問題、転倒・骨折の問題、認知機能低下の問題が取り上げられてもやめれないはずだ。所詮依存症のなのだから。1ヶ月服用したらほぼ依存が成立するのだから。
 デパスを国が飲ませないようにした頃から僕の薬局に睡眠薬や安定剤をやめたいという人が訪ねてくるようになった。それまで飲まないほうが良いよと口にはしていたが、睡眠薬や安定剤の信者は相当いて耳をかさなかったが、さすがにアメリカへの持ち込み禁止薬と聞いたら恐ろしくなったのだろう、漢方を頑張って飲む老人も増えた。僕は以前から「製薬会社が合法的に売れるヤク」と言っていたが、やっと「寝ていないかもしれない病」の脅迫概念から抜け出す努力をこの国の人たちも始めるようになるかもしれないと思い始めた。
 老人など山6時間くらいしか眠れないのが普通だ。果たして初診時にそう声をかけてくれ、睡眠薬など出さない医者がどのくらいの割合でいるのだろう。デパスを安全だと言って何十年も飲ませてきて、いまさらアメリカに注意され飲まないように指導するというようなことで患者さんが納得するはずがない・・・・・がほとんど全員の人が納得している。デパス欲しさに。