アオザイインパクトは強い。牛窓の祭りで、接待場所になっている僕の薬局は、多くのだんじりの引き手やみこしの担ぎ手が楽しみにしている。もう何年も、ベトナム人若い女性達がアオザイ姿で接待するから。
 今年も昨日来日した女性を含めて6人がアオザイ姿で接待した。もう慣れて、簡単な打ち合わせで滞りなくやってくれる。昨日来日した女性は、なんと来日前にアオザイを持ってくるように日本から連絡があったそうだ。「お父さんを手伝う」と言う理由だったらしいが、実際には僕の出番はない。接待の15分くらい顔を出しただけで、土曜日にゆっくり時間をかけてきてくださる遠来の相談者と机をはさんで対峙していた。悩み多き人と、アオザイで晴れやかな異国の人と、厚化粧と酒で日常から逃れた多くの引き手が、土曜の午後を一つの景色に作り上げる。全くの他人が、悩みや苦しみを共有し、又争ったりして100年足らずの命を燃やし尽くす。力んでも力まなくても時は正確に刻まれるが、苦しみはゆっくりと、楽しみは一瞬で過ぎていく。
 豊作を願った祭は、終生土を耕したこともない多くの人によって行われる。東の国の無念の秋に、後ろめたい営み。