領域

 「こりゃ、おえん」結局は買わずに帰ってきた。
 シックインジェクターと言う、2枚歯髭剃りを使っていたが、数日前に柄が折れてしまったので、今日の祭日を利用して買いに行った。あるホームセンターでいつも替え刃を買っていたので、その店に行った。いつも替え刃しか用がなかったので改めてそのコーナー全体を見てみて驚いた。髭剃りの道具が沢山並んでいるではないか。僕の記憶ではシックとジレットが競っていたように思ったのだが、今日見たコーナーのいちばん目立つ陳列は初耳の会社のものだった。何しろ包装とか道具本体の格好がよい。車がロボットに変身する映画を見たことがあるが、なにやらそれを髣髴させるような商品ばかりだった。
 さてお目当ての商品をなかなか見つけることができなかった。と言うより、結構丁寧に商品を探したから、もう商品として存在していないのではと思った。何故なら、そもそも2倍刃と言う商品がないのだ。僕が2枚刃を使い始めたのはいつの頃だったか忘れたが、なにしろセンセーショナルだった。本当のところは知らないが「よく切れる」と信じていた。
 ところが、今日目にしたのは、最高6枚刃と言う商品だ。それは奇をてらったものではなく、ほとんど主流のように思えた。その下が5枚刃か、4枚刃か忘れたが、最低が3枚刃だったような気がする。道具本体はこんなに安いのと思う程度だったが、替え刃が結構高かった。本体の二倍どころではない。替え刃で利益を上げようとしているのは見え見えだが、僕がためらったのは、その6枚刃と言う点だ。替え刃を見てみると、ここまで必要なのと思った。どんな利点があるのか知らないが、見た目の滑稽さでもう後に引いてしまった。要はついていけないのだ。
 めったに使うことはなかったが、安物の電気髭剃りを持っているから、それを使うことにしたのだが、世の流れについて「いかない」自分が楽しい。どうでもいいことまで世の進歩にあわせる必要はない。自由の領域を大切に守って、力まずに生きて生きたい。