腕時計

 姪が「おじちゃんは珍しい人ではないですか?」と言うが、自覚は無いが、そうかもしれない。珍しいと言われても何か特技があるわけではない。それなら格好いいがそんな人に言えるようなものではない。ただ僕が時間を知るものをもう40年以上持ったことがないからそれを言っているのだ。つい最近までは腕時計、最近は携帯が腕時計代わりになっているらしいから、そのどちらも持っていなのが珍しいと言うのだ。  公衆電話はかなりが撤去されたから不便を感じるが、店舗の時計はさすがにまだまだ健在だ。少しばかり前傾して店の中を覗けばかなりの確率で時間を知ることが出来る。たまに入り口に向かって横壁にかけているものもあるからそういったときは苦労する。店舗の都合なのだろうが、あてにしている僕には冷たい仕打ちだ。  恐らくこのまま時計なし、携帯なしで通すだろうから、得意の前傾がいつまでも出来るように筋骨の衰えを防がなければならない。数日前、腕時計式のスマホ?が出来て発売が近いと言うニュースを見たが、そこまでして僕に買わせようと言うのかと、究極のナルシシズムを発揮したが、電磁波びんびんの道具を腕につける勇気はない。電磁波の人体に対する影響は、現在、壮大な人体実験の途中だと認識しているから、実験動物になるつもりもない。  便利で得られるものは無くても困らないが、便利で失うものは無くては困るものが多い。