成長

 もう10年くらい毎朝同じところを歩いているのに、1ヶ月前から遭遇し始めた光景は初めてのものだった。初めて目撃したときは、てっきり自然災害から逃げているのだと思って、このブログにも書いた。ところが最近毎日のように見かけるのだ。僕が歩き始める時間帯が、彼らの集団歩行と、いや集団飛行と一致したのだろうか。僕の散歩時間は、何年も夜の明け具合にスライドさせているから、毎年同じことを繰り返しているはずだ。となると、こちらの要因ではなくあちらの理由からだろうか。そもそも当時彼らがいたのかどうかも分からないし、他のあまたの要因は知識不足で想像できない。しかし、理屈は分からなくても、その光景を目撃すると、なんだか幸せな気分になる。Vサインをしたこともない僕だし、これからも絶対しないだろう僕だから、その飛行形態に同じような感慨を重ねることはまず無い。むしろ風の抵抗を出来るだけ防ごうとする小さな鳥達の知恵やけなげさに感動するばかりだ。  鳥達の編隊飛行が西の空から南東に消えるまで、上を見ながら歩く。同じ鳥達かどうか分からないが、毎朝の出会いに喜びを感じる。何かいいことがあるかもしれないと、今では感想も違ってきた。こんな些細な楽しみや喜びを見つけることができるようになったのは成長か、それとも老いか。