車間距離

 頼まれたらいやと言えない・・と言うより、いやと言わないことをモットーにしている僕だが、これはさすがにできないと思った。なにしろ僕は東は吉川、北は新見、西は福山、南は高知と、いたって近隣の地味な市町村をドライブ最長記録にしているから、関空まではちょっと。  息子が関空まで人を送っていかなければならないというタイミングで高熱を出した。ホテルも飛行機も予約しているから、どうしても今日送り届けなければならないらしい。高熱がある状態で関空まで車を運転するのは危険だから、何とか僕が代わってあげようと思って、グーグルで調べてみた。  幸い牛窓岡山県の東に位置しているから、ぶっ飛ばせば3時間くらいでいけるらしい。ところがホテルが大阪となると・・・と調べると、意外と大阪市内からは1時間以上かかる。もっとも、あんな大都会を運転したことがない僕には、所詮無理に思えた。片側何斜線か分からないが、車間距離などとりそうもない大阪人の運転する車の中を運転する勇気は無い。薬の会社は大阪に多くて、セールスが何人か毎月訪問してくるが、大阪の交通マナーの悪さは、半端ではないらしい。ちょっとのスペースがあれば、滑り込み、いや振込み、いや使い込み、いや口コミ、いやいや割り込みをするらしいから、車間距離50メートルの僕には別世界だ。  色々思案した挙句だんだん弱気になっている僕を見て、息子は自分が行くから気にしなくてよいといった。それは助かるが、やはり高熱のまま運転してもらったら怖い。そこで思いついた。熱を早く下げてやればいいんだと。そして倦怠感をとってやればいいんだと。やはり後方支援のほうがあっている。  嘘か本当か分からないが、熱も下がって体力も回復したからと言って出て行った。僕はこの1年、ナビがついている車に乗り始めてかなり強気で運転できるが、やはり大都会は怖い。県外は新幹線に限る。