衝撃

 まだ岡山教会の、かの国の青年達に和太鼓のすばらしさを体験してもらうことができていなかったので、今日倉敷で開催された「日本縦断和太鼓コンサート」に連れて行ってあげる約束をしていた。ところが待ち合わせの岡山教会に行くと、約束していた7人は揃っているのだがその中の2人が体調を崩していて、一緒に行けないと言う。約束していたのは2ヶ月前だから、この2ヶ月の間で体調を崩したことになる。  2人のうちの男性のほうは、会社が忙しくて、寝るのが毎日午前2時、起きるのが朝の6時だと言っていた。一目見て痩せたなと思ったので尋ねてみると、そのような答えが帰ってきた。車で30分くらいで行ける距離でもためらうくらい疲れているのだろう。  女性のほうは疲れているというより病的だった。ミサでもしばらく会っていなかったので「元気?」と声をかけてみると「元気ではないです。病気かもしれません」と流暢な日本語で答えた。かの国の青年たちの中心的存在なのに、それでは多くの仲間達が困るだろう。「お父さんに、詳しく教えて?」と言うと、知っている日本語を駆使して病状を説明してくれた。残念ながら細かいところまでは伝わってこなかったが、恐らく起立性調節障害と貧血だろう。「病院にかかっているが治らないんです」と心配そうな表情で訴えるが、皮肉にも、その分野は現代医学が苦手としているところだ。病院でもらっている薬を教えてくれるように頼んで、残りのメンバーだけで倉敷に向かったが、2つの意味で心残りだった。  1つは、体力にいまひとつ恵まれていないタイプの青年達の、手伝いをもう少ししてあげたいこと。そしてもう1つは、2枚も貴重な和太鼓のチケットを無駄にしたこと。せめて前日にでも教えてくれていれば、コンサートに行けず我慢した青年達の中から2人を連れていて上げれたのにと言う後悔。  完璧を求めても仕方ないことは分かっているが、色々な小さな不備には遭遇するものだ。初めて見た和太鼓演奏の衝撃の表情を唯一、僕への御褒美として毎回連れて行くが、ほとんどツアーコンダクター状態だ。