封印

 言葉を選ばなければならなかったことがよく分かった。いや、相手を選ばなければならなかったのかな。相手の人間性でなく、相手の住んでいるところを。
 僕と直接話をしたことがある方はよく分かると思うが、僕は品に溢れていて、堅苦しくて非の打ち所がない。昨日ある方から健康相談を受けた。僕と同じように真面目そのものの人間性が電話口から伝わってくる。長年のトラブルが治らなくて相談してくれたのだが、僕は原因は何かの祟りではないかと思った。そこでその方に「どこかで白い蛇を殺しなんじゃないの!」と尋ねた。すると女性は笑いながらそんなことはしていないと答えた。ここまでは僕の健康相談ではよくあるパターンだ。ところがその方は違った。
 10分後くらいにその方から2度目の電話があった。そして何と、本当に親類の方が白い蛇を殺したと言うのだ。ある職業の方で、蛇を殺すにはもってこいの道具を持っていたらしい。そこで正にかつて白い蛇を殺したことを親類の方から教えてもらっていたのを思い出したそうだ。「やはり祟りでしょうか!」と真剣な声で尋ねられた。普通ならここで「はい、祟りです」と真顔で答えるのだが、僕と似た上品そうな方だから、慌てて打ち消した。「僕なんかもう何匹蛇を殺したか分からないよ。蛇は嫌いで怖いから、見つけたら何としても殺して、近くをうろうろ、いや、にょろにょろさせないために殺すんよ。でも安心して、沢山殺している僕が幸せなんだから、祟りなんかないよ」と答えた。
 白い蛇がいる環境に住んでいるとなるとさすがに田舎だ。関東地方でも全ての県が都会ではないと認識した。県名を聞いてなるほどなと思ったが僕の取って置きの問診を封印するのは忍びない。これからは、人口分布に合わせたギャグを見つけなければならない。都会では今までどおり白い蛇、田舎では安倍にしよう。、