不幸

 コンビニの防犯カメラに写っていた二人の後姿を見て自分と重ねた人は多いのではないか。「あの頃」を持っている人の多くが哀しみを共有できたのではないか。幼いお子さんに喜んでもらおうとお父さんは雪深いほうに入って行ったのだろうかと、おじいさんは言っていたが、若いお父さんならそう考えるのも無理はない。知識も体力もあるから少々のことは出来る世代だ。
 発見されたときの状況は、2人が覆いかぶさるようだったらしい。どこの親でも必ずやることだ。雪が残る寒い夜に、自分の体温で子供を温めようとするのは当たり前だ。それをしない親がいるだろうか。その時どれだけ2人を恐怖が襲っただろう。遭遇してみなければ分からない極限の状態で、2人は何を思ったのだろう。ただひたすら死の恐怖に襲われていたのだろうか。
 悲しい出来事が多すぎる。不幸な出来事が多すぎる。ただひたすら生活するためだけに働いていた時代には起こらなかった不幸がある。自由で豊だからこそ遭遇する不幸がある。多くを手に入れたからこそ失うことがある。慣れていない分深い哀しみがある。