こちらが尋ねもしないのに、唐突に何人かに同じ内容のことを告げられた。ひとつはある方が急に亡くなった事。それこそ突然らしい。話から心筋梗塞かなと推測される。もうひとつは、2、3日前に会ったよ、2,3日前に見たよという言葉だった。
 オリンピックとまでは言わないが、その方は牛窓ではヒーローだった。僕らが幼い時、或いは成人して帰って来たときでもスポーツ万能は衰えていなくて、10歳以上も年上なのに何をやっても歯が立たなかった。昨日まで、いやさっきまで元気だったのにと言うのは、元気な人の特権だ。弱い人はとにかく長い。若者のときから不調なんてのもある。
 よその土地ではどう表現するのかしらないが、この辺りでは「いい死に」と表現する。正に本人にとっては最高の亡くなり方だろう。苦痛の時間はかなり短かったろう。未練も残りようがないに違いない。とても良い家庭を築いていたからゆっくりだと未練だらけになる。スポーツマンらしく剛速球を打ち返して場外に消えていった。
 今年は温暖な瀬戸内でもさすがに寒く、名も無きヒーローたちが少なからず星になった。氷のような星空から、氷のように心が凍てついた人が多く暮らす地球を見ているに違いない。