飼育

 「全国の複数の医療機関精神科医が、強制入院などの判断を行う「精神保健指定医」の資格を不正に取得していた疑いのあることが、厚生労働省の調査でわかった。不正取得が疑われる医師とその指導医は計100人前後に上り、神奈川県相模原市知的障害者施設で起きた殺傷事件で、逮捕された容疑者の強制入院措置に関わった医師も含まれているという。」

 精神科医にとってこの精神保健指定医の資格はかなり価値があるものらしくて、収入が1・5倍から2倍くらい違うらしい。僕らでも今の収入が1、5から2倍もらえるとなるとかなり魅力的だ。何に使ってやろうかと一度に財布の紐が緩みそうだ。ただ僕らは小心だから、いくら倍増するといっても悪事は働かない。働けない。ところが世の中で尊敬される職業として上位に来そうな彼らが、かなり悪質だとしたら、どんな制裁を加えられるべきなのだろう。相模原市の事件などいわばその医者は共犯者だ。20人近く死んだことに対して、無関係を通すのだろうか。  本当のうつ病やそれ以上の心の病に関して、専門家である彼らが、オフィスの机を挟んで、患者さんと数分対峙し投薬する。効果が得られなければ精神病薬をこれでもかこれでもかと増やし続ける。まるで薬以外に治療法がないかのようだ。外から見ていたら、まるで人間を飼育しているように見える。  もし海を見下ろす丘の上に、ロッジ風の建物が並び、動物が草むらで戯れ、虫が鳴き、鳥が空を飛べば、心のトラブルはかなり改善されないだろうか。そこにもし本当に心優しい人がいたら、病気は個性に変わらないだろうか。コンクリートの狭い部屋、あてがわれる薬。普通の精神の持ち主だと監獄に近いような環境でどう改善していくのだろう。最終目標は何処に定められているのだろう。  優秀な人材が集まる医者の世界でも、時々脱落する人間が出てくる。受験戦争を勝ち抜く間に身につけておくべきだったことをないがしろにしていた付けを、いとも簡単に払う人達だ。