恐怖

 知らない言葉第2弾。昨日は「ガゼボ」について書いた。今日は「トラバサミ」だ。  日曜日に母を見舞いに毎週玉野市に行くが、その道中の金甲山付近は昔から野犬が多い。岡山市から淡水湖をはさんですぐのところだから犬を捨てるには「交通の便がよい」のだろう。悪事をするにも便利でないと皆やらかさない。悪事で苦労できるくらいなら全うな世界で苦労も出来るだろう。  秋ごろから見かけていたビッコを引く犬が、足が一本途中から切断されている事が分かった。切断と言う単語を使えたのは、漢方の勉強に来ている捨て犬を世話するボランティアに参加している薬剤師が教えてくれたからだ。僕は交通事故かなんかを想像していたが、彼女の推理によると猪をとる罠に引っかかったのだろうと言うことだ。その罠が、テレビなどで目にする、開いたサメの口みたいなのが一瞬にして絞まる機械だ。まるでサメの口のように見えるが、トラが口をあけたときのように見えた人がいるのだろう、トラバサミと名づけたみたいだ。本当かどうかは知らないし、ひょっとしたらトラを捕まえるための道具だったりして・・・。まあ、その名前が分かればいい。会話が進行しやすいから。  恐らく、足を挟まれて、懸命に逃れようとして切断されてしまったのだろうと言うことだが、考えれば考えるほど痛ましい。是非来週は、雨をしのげる小屋と毛布と餌と水を持っていこうと思うが、親切な人がいて恐らく何かの保護を受けていると思う。「あの犬を捕まえることが出来ないかな」と薬剤師に尋ねると「先生、捕まえたら飼いますか?」とそれはそれは恐ろしい顔で迫られた。本当に犬の命を大切にしている人の覚悟が伝わってきた。「かわいそう」なんて甘い考えで彼女達は世話をしていないのだ。自分の仕事を制限してまで世話をする人たちの覚悟には及びもつかない。  生半可な考えを糾弾されても、所詮僕には餌やりくらいしか出来ない。1週間に1度でも、健康によい食べ物を、恐怖で震える体の前においてやりたい。ごめんね、同じ人間として恥ずかしい。