葬儀

 「シェルターに入っていた子が亡くなったので、明日葬儀があります。申し訳ありませんがお休みさせていただきます」  何があったのだろうと、不安で胸が高鳴った。ひょっとしたら亡くなった人は中東かウクライナに出かけていたのか、あるいはドメスチックバイオレンスで逃げていた人か。  「通夜は何処であるの?お寺さんは何処なの?出棺は何時から?市役所に連絡をした?」薬剤師はまだ若いから、葬儀の手配など慣れていないだろう。手落ちがないか心配になり、僕の記憶を呼び戻し(牛窓は町内会を2年毎持ち回りで世話をする。だから運が悪ければ葬儀の中心的な世話係りになることがある)思いつくままメールを返した。亡くなった子と薬剤師との関係がいまいち分からないから、僕の関与の仕方も分からない。落ち着かない時間を過ごしていたら返事が帰ってきた。「犬です」  捨てられた犬や猫を世話している人達にとっては、犬は擬人化されるほど可愛がられ、大切にされる。だから部外者には紛らわしいこんな言葉が自然に飛び交うのだ。  「ややこしや、ややこしや」