不合理

 この雰囲気だと「えーい、らっしゃい」と声を掛けたいくらいだ。  電話があるのが事務室で調剤室ではないから、電話注文を受けたら、黒板に人の名前を書き、調剤室で薬を作る。勿論、複数の薬の注文も結構あるから、商品名も書く。逆に調剤が終わり発送の用意が出来たら、黒板の名前を消しに行く。又途中で確認にも行くことがあるから、結構調剤室と事務室を往復していることになる。  最近、この動きが気になりだした。どう考えても不合理なのだ。何とか工夫したいなと思っていたときに思いついたのが、レストランなどで注文を聞いたらメモらしきものを目の前に貼って、それを確認しながら料理を作って行く段取りのよさだ。丁度目の前の高さには金属製の棚があるから、磁石なら簡単にメモを挟むことが出来る。早速磁石を数個買ってきて今日からスタンバイした。  朝から電話がひっきりなしに鳴る・・・・・様な薬局ではないから、いやどちらかと言うと手持ち無沙汰な薬局だから、能率など考えなくてもいいのかもしれないが、電話の内容を紙切れに書きとめ、それを持って調剤室に行き、目の前に貼って、それを見ながら調剤すると、結構能率が上がるような気がした。実際にどの程度貢献できているのか分からないが、レストランの厨房を想像しながら働くと、モチベーションが結構上がった。  変化に乏しい仕事だから、こうしたちょっとした工夫を楽しむのは牛窓に帰ってからの習性だ。元手をかけずに創意工夫だけでやって来た。「えーい、らっしゃい」などと声を掛ける必要がない薬局を目指してやってきた。医者より患者のほうを見ることが出来る薬局を目指してやってきた。