負荷

 ほっとした。自分でも気がついていた。最近負荷がかかりすぎだと。望んでそうしている節もあるが、そもそも頑張る自分が嫌いではないのでブレーキを踏むのは苦手だ。ただなんとなく限界に近づいているような気配を感じていたので、一つ解決したことで負荷が減った。ただこれは僕一人の手柄ではなく、多くの方の善意で決まったものだ。恩恵を受ける二人は分かっているのだろうか。ただ採用が決まってすぐにお礼の電話をくれたから少しは想像してくれているだろうか。ひょとしたら僕ひとりの力と思っているかもしれない。だから、たくさんの日本人の善意のおかげだと言い聞かせておこうと思う。  留学生と言いながら、実は単純労働者。学校が業者とグルになっているのではと思わせるようなところがあるから、そのルートの仕事にはつかせたくなかった。実際、あの二人以外はアルバイトを3つくらい掛け持ちでやっているのだから頭から勉強などする気はない。だから二人は交友関係で距離を保っていると言っていた。  二人の希望を聞きながら、最低限の生活費と授業料を確保できるアルバイトを探した。条件で優先したのは、日本人と多く接し、社会の役に少しは立てること。二人と言うより僕の希望だったかもしれないが、以前母の入所している特別養護老人ホームに見舞いに行ったときに、二人がこんなアルバイトはないですかと言ったのを聞いて、この仕事ならと僕も思ったのだ。  採用が決まった老人施設は、運のいいことに今住んでいる寮から自転車で10分らしい。コンビニ弁当の盛り合わせのアルバイトで深夜に自転車で帰っていっていたことを思えば、夜の9時の岡山市なら安全だ。送り出してくれたかの国の御両親も安心してくれるだろう。日本語の上達を至上命題としてやってきている二人だから、職場での日本語によるコミュニケーションも勉強の一環になる。日本語が上手になって帰国すればよい仕事に就け、収入も良いと誇らしげに語る二人の役に立ててよかった。そして僕は当分、苦手な職探しに時間を割く必要がなくなった。職探しなるものを一度もしたことがない僕だから良い経験にもなったが。