元凶

 結構なお金と時間を使って挑むのだから悔いが残らないようにしなければならない。そういった意味では今日来られた方は残念だろう。  藁をもつかむのはいいが、その藁もできれば調べたほうがいい。脊柱管狭窄症でルミンを買って飲んでいたらしいが、買うほうに責任はない。責任があるとしたら売るほうだ。もっとも生活のために売るのは当然だからそれはそれでいいのかもしれないが、少なくとも、効かなくても「仕方ない」と言えるものでないといけない。無駄な投資をした上に、治療が遅れるようなことがあったら悔やまれる。  ルミンを脊柱管狭窄症に売る意味は分からない。薬理的に言ってもお門違いだ。高価のものを売ると、売る側の財布は潤うが、買う側は逆だ。財布を空にさせるなら、それに見合う効果を提供しなければならない。ルミンに対して店側の狂信的な信頼があって、それ以外の選択肢を最初から持っていなかったのだろう。恐らく僕の30年以上の経験で言うと、その店はどんな客が来てもルミンを売ることを優先していたのだろう。こんな店は結構一杯あって、どんな人がきても勧めるものは同じって言うところがある。えてしてそういったところのほうが情熱的だから、よく流行っている。ただ当然といえば当然だが結局は見透かされて、次第に衰え廃業していく。今日来た方がひいきにしていたところも店を閉めたらしい。  そもそも売るためのトークが機関銃の玉のように出てくるところは気をつけたほうがいい。必要なのは質問で説明ではない。薬を選ぶために僕など質問しまくる。といってもポイントは抑えるが。今日の方の場合はルミンだったが、ルミンが悪いのではない。商品に患者を合わせる・・・・これがすべての元凶なのだ。商品に合わせるのなら医者も薬剤師も必要ない。健康食品みたいに企業と消費者が密着していればいいのだ。  最近はすべてのものが企業の言いなりのような気がする。朝から晩までコマーシャルを流され洗脳される。番組まで買収されているようなものもある。相手は何千億の金を使うのだから、よほどこちらがしっかりしておかないと言うなりだ。必死こいて働いて得た金を、いとも簡単に奪い取られる。浮かばれない人生を強いられて、沈んでいるとは気がつかない。いつの世も庶民はお人よしで、金持ちはやりたい放題だ。