物議

 昨夜、仕事を終えてシャッターを下ろそうと外に出たとき、大きな音がしてヘリコプターが近づいてきた。普段耳にするヘリコプターの音よりかなり大きくて重量感があった。2機のヘリコプターが結構近い間合いで西南西から近づき、北東のほうにまるで僕の真上を通るかのように飛んでいった。そして機体の前後に灯かりがともっていたが、点滅する光もつきっぱなしの光も結構大きかった。  なんとなく僕はあることを思いついた。これがかの有名な物議をかもしているコスプレと言うヘリコプターではないかと思ったのだ。コミックのキャラクターで着飾ったヘリコプターで、しばしば落ちて乗員が死ぬから未亡人を作るヘリコプターといわれているらしいが、コスプレで戦争しても似合わない。平和のときにこそ楽しむことが出来るコスプレに戦闘機は似合わない。  どうやら名前が違っているらしい。コスプレと聞こえたのだが正しくは、ヘリコプターにも飛行機にもなるその正体は、ゴスペルというらしい。奴隷としてアメリカにつれてこられて、キリスト教の福音と出会って生まれた祈りの唄だ。平和を祈る唄に戦闘機は似合わない。  コスプレもゴスペルもどうやら僕の頭上を飛んではくれないらしい。恐らく昨夜飛んだのはオスプレイではないか。もっとも夜で見えなかったから断定は出来ないが、息子も異常に大きな音と表現していたから、そこらにあるヘリコプターではないだろう。こう推測するのにはきっかけがあって、昨日の朝、郵便受けにポスティングされていた共産党市議団のチラシに、瀬戸内市の上空を飛んだことに抗議したというような文章を見つけていたのだ。その時は何も感じることはなかったが、あまりにも大きな音でそのことを思い出した。  望みもしないのに戦争が向こうから近づいてくる。若者から死に、貧乏人から死に、田舎の人間から死ぬことに耐えられるのか。それに耐えられる人間だけで盛り上がってくれればいい。