人生相談

数年前に初めて薬局にやってきたとき、入り口の辺りからもう泣いていた。昨年、いや一昨年になるかな、車の免許を取るときに、教習所で教官や他人と一緒に狭い車に乗らなければならないことや、学科の勉強で教室に入らなければならないことが苦痛で泣いていた。ところが今回、彼女は涙を流すどころか、時に笑い声をはさんで、「明るく」嘆いていた。この間にずいぶんと大人になったものだと思う。立派な大人とまでは形容できないが、そしてゆっくりとした歩みだが、着実に大人になっている。生活費を稼ぐために2つのアルバイトを、それも本来一番苦手とする接客の仕事をしている。11、いや21、あれっ31だったかな、いやもっと多い数字だったかな、どうでもいいや、要は今風のアイスクリーム屋さんで働いているそうだ。その店を僕は当然知らないが、最近モダンなアイスクリーム屋をよく見かけるから同じようなものだろう。この機会に言わせてもらえば、もう僕の世代では近寄ることが出来ない。たかがアイスクリームなのに、どれを買えばいいのかわからないくらい種類が多いし、そもそもどう言って注文したらいいのかわからない。相談電話なのにここぞとばかり、アイスクリーム屋さんについて僕の感想をぶつけてみた。すると彼女は相談なんかほっといて親切に教えてくれた。それによるとお客さんの中には結構年配者が多いらしい。おじいさんなんかもやってくるらしい。もっともお金と時間はたくさん持っているから、さもありなんとは思うが。そして案の定、勝手がかなりわかりにくいらしくて、買い方の質問をよく受けるらしい。いったい、買い方もわからないような商売があるのかと思うが、実は最近多い。お金を持っている世代をみすみす失っているようなものだ。こんなときおそらく彼女は俄然力を発揮するだろう。青春の一番いいときを、いわゆるガス漏れで棒に振ってしまったのだから。ただ彼女は、ことおしゃれにおいては結構洗練されているように僕には見えたので、かつての夢をかなえるように、自分自身が輝ける場所を求めて挑戦したらいいのにといつも思っていた。だから今回せっかく完治していたものがぶり返したと相談してきたが、僕は逆に思い切ってその場所に出て行く機会にしたらいいのにと思った。症状がぶり返しでもしないと僕と接触することもないだろうから、僕の従来の考えを伝えた。健康相談が人生相談になってしまったが、僕の心の中では、彼女もまた大切な若者の中の一人であり続ける