道路を挟んだ向かいにある駐車場に軽のバンが止まったのを何気なく見ていた。すると若い一組の男女が降りてきて薬局に入ってきた。すぐに誰だかわかった。 ありがたいことにこの二人は牛窓に住みたくて東京から空家を物色しにやってきている人達だ。もう2回目か、いや3回目かな。ただ待てよ、東京からあのバンでやって来た の?。挨拶もそこそこにその疑問を彼らにぶつけてみた。「あの車で東京から来たの?いったい何月に出発したの?」と。すると彼らは笑いながら13時間で、それも途中で休憩した時間を含めて、やって来たと教えてくれた。信じられないけれど高速道路を利用してきたらしい。確かに時々僕も高速道路を利用するが、勇敢にも軽が走っていることもある。ただ僕の印象では、やむなく高速道路を利用しなければならない地元の人が、限られた区間いやいや走っているものと思っていた。ところがどっこい、あの車でいくつかの名前が変わる高速道路を走り続けてきたのだ。詳しくは知らないが、東名、名神、山陽などではないか。  若いということは勇敢でいい。年とともに、実はどうでもいいようなものなのに守るものが増えて臆病になる。守る価値もないものを後生大事にしているのかもしれないが、とにかく危険なことは避ける傾向にある。だから軽で100km近いスピードを出して東京からやってきたことに敬意を表したいくらいだ。その上縁あってこの町に住み、夢を実現してもらえれば、少しでもかかわったことが喜びとなる。「岡山県の他の町に来た人はいわゆる放射能から避難してきた人が多いが、牛窓に来る人は何かをしようとポジティブな人が多いです」と男性が言ってくれた。さすが軽で東京から来る人。それだけで十分ポジティブだ。