島根県

 僕らの所に届く業界紙だから、週刊誌のように低俗な興味本位の記事ではない。だから島根県の人は喜んだらいい。日本で一番美肌の人が多いというのだから。 山陰は日照時間が短くていやだと、こちらからお嫁に行っている人が帰省するたびに言っていた。逆に、僕の薬局に泊まりがけで病気を治しに来た若い女性は、朝、戸外に出たときにまぶしいと言った。僕らがそんな表現をするような天気ではなかったから驚いたのだが、彼女にとっては山陽の空はまぶしかったのだろう。  日照時間が短く、冬でも湿度が高いと言うのが肌にはいいらしい。洗濯物が乾かないと言う日常の不便はあるかもしれないが、今流行りの美肌効果が高いとなると、長所と短所、どちらを洗濯、いや選択するかが問題だ。  島根の人は美肌だけではなく、心も綺麗なのかもしれない。綺麗と言うより純朴と言った方がいいのかもしれない。例えば過敏性腸症候群で僕の漢方薬を飲んでくれている人は圧倒的に都会が多いのだが、当然関東圏と関西圏と中部圏だが、意外とかの長閑そうな島根県にも多いのだ。直接会った人も数人いるし、電話注文で話をする機会が多い人もいるから、人となりが良く分かるのだが、とても誠実さが伝わってくる。大都会の喧騒の中の孤独と、共同体がまだ恐らく破壊されていない地域での孤独と、呈する症状が同じと言うところが興味深い。昔、神話が生まれた地域と、今、新しい罪悪に満ちた神話を作り出している地域に住む人達が同じ症状を呈することが興味深い。  美肌と美心と美共同体。幻想の中に消えないで欲しい。