合格

 今年の合格第一号がでた。別に予備校の宣伝でもないが毎年恒例の受験生からの報告だ。僕の場合、普通の報告と違うのは、多くが過敏性腸症候群の子からの報告だから健康な子に比べれば喜びは比べものにならないくらいある。  授業で、自由を50分間奪われる学生が過敏性腸症候群を治すのはかなり難しい。大人なら自由に動き回ることが出来るから、ガスが出ようが、溜まろうが、お腹が鳴ろうが痛かろうが関係ない。席を立ってトイレに行けばいい。それでその時はなんとか逃れられる。ただ生徒はそうはいかない。手を挙げてトイレに駆け込むのはかなり勇気がいるから根性で我慢することになる。緊張もピークに達し、時にはしくじることもあるだろう。まるで囚人状態の教室で心が原因のトラブルを治すのは難しい。 大学に入れば治る。そう言って励ましてきたが、ほとんどの子がその通りになる。パチンコ屋にいる時間が、教室にいる時間の数倍も長かった人間が、薬剤師になっているのだから、そんなに学生生活を力むことはない。学者にでもなろうかというならそれなりに頑張ればいいけれど、ほとんどの人は所詮凡人で、たかだかしれているのだ。  「病むほど頑張らない」簡単な言い回しだが実際に真面目な子ほど難しいテーマで、頑張って病んでしまう。高校を卒業するのにあわせて、頑張らない術も身につけて欲しいと思う。嘗て僕が入学後数日で身につけたように。