副作用

 有名なアルツハイマー型痴呆の薬は濃度が薄い順に、1錠が238円 356円 636円する。毎日これを1錠ずつ飲むのだけれど、それを飲むには医師の診察を受け、薬局で調剤されてでないと飲めない。となると薬代に医師の診察代、薬局の調剤代が加わるから、1日あたり一体いくらになるのだろう。果たしてそれだけの税金を費やして、どれだけの人が恩恵にあずかっているのだろう。僕は処方箋上でその処方をよく見かけるが、効果を喜んでいる人や家族を未だ見たことがない。  アルツハイマーの症状は進行する認知障害(記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、空間認知機能や問題解決能力の障害など)であり、生活に支障が出てくる。重症度が増し、高度になると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになる。アルツハイマーは徐々に進行する点が特徴的。症状経過の途中で、被害妄想や幻覚(とくに幻視)が出現する場合もある。暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(いわゆる周辺症状)が見られることもあり・・・主な副作用として、興奮、不穏(落ち着かないこと)、不眠、徘徊(あてもなく歩き回る)焦燥感、攻撃性・・・・ なんじゃこりゃ、アルツハイマーとその薬の副作用がよく似ている。これだと症状が進んでいるのか副作用か分からない。  この2週間、93歳の母が人格を急ピッチで破壊し始めた。デイケアで通っている施設から暗に退所をほのめかされるくらいだ。施設にいる間、誰かれ無く指でさして悪口を言うらしい。勿論家でも途切れることなく寝るまで続く。せめて最期は祖母と一緒に過ごしたいと言って帰ってきている息子も、祖母の急変に驚いていたみたいだが、取り敢えず薬を止めさせようと言うことになった。92歳まで薬なんか飲んだこともない母だが、介護認定で医師の診察を受けなければならなくなって、以来その薬を飲んでいた。勿論家族としては何ら期待していないが、医師との関係を切らさないためだけに飲ませていた。早速効果が現れたみたいで、もっとも夕方ある薬を息子が飲ませ始めたのも功を奏したのだと思うが、今日は2週間前の状態に近かった。 笑えない話だ。アルツハイマーの攻撃性や暴言を治したかったのに、アルツハイマーを遅らせることが出来るという薬でより攻撃的になるなんて。一人の老婆の治らない頭の為に恐らく1日分1000円近い税金が使われていると思う。もし痴呆の老人が全国で500万人いたとすると、1000円×500万で50億。1年間で1兆8千億?ああなんて事だ。天文学的な数字のお金が効きもしないのに国民からむしり取られている。  「可愛く痴呆になった方がいい」なかなかうまいことを息子が言った。職業柄薬物療法に走りがちな彼に何かしら最後の教訓を母が残してくれたら「恐ろしい夜も」家族で耐えられる。