精度

 「あれだけ漢方薬を取りに来る人が多いのに、どうして風邪には現代薬を出すのですか?」と業界関係の方に尋ねられた。答えは簡単だ。「良く効くから」それだけだ。付け加えるとしたら、僕にとっては選択肢の中に加えたくないが、圧倒的に安い。3日分で900円頂いているが、ほとんどの方がそれだけで治るし、早く飲んでくれる人は1包で治ってしまう。今は僕はほとんど補助みたいな形で働いているが、娘夫婦がしばしば処方箋調剤の間に風邪薬を作っている。皆さんによく浸透して結構上手く利用してくれているみたいだ。病院に行く必要もなく、ひょっとしたらそれで体力を失うことも防げるから、病院にかかるより良く効くかもしれない。  そんなことを感じる日々だったが、今日ある業界紙を読んでいたら、その僕の日々の感想を裏付けるような記事が載っていた。ある大学の感染症を専門とする教授の文章だ。医師や薬剤師のために書かれたのだろう。長い文章だからまとめることは出来ないが、心に残った箇所を箇条書きでもいいから紹介したい。  ○医学部の講義で風邪の診療を教えているところはほとんどない  ○風邪は基本的にはウイルスの病気だから抗生物質を使うメリットはなく、副作用と天秤にかけると副作用のほ  うが上回る。  ○風邪とは気道症状があるもの(咳 鼻 のど)  ○子供は年に5から6回風邪を引くが、60歳以上は1回  ○風邪が1週間以上治らなかったら、抗生物質が必要になってくる  ○風邪には病院の薬はあまり効かない。家で安静にしているほうがいい  ○高齢者や心臓や肺に病気がある人以外は、風邪とインフルエンザを区別する必要はない 確かに大学病院など大きな病院にかかっている患者さんの風邪薬は至って簡単なものだ。遠路はるばるそこまで行ってこれって思うけれど、理屈がよくわかっている医師たちだから、安易に患者に妥協せず、正しい処方を出すのだろう。特に僕が一番印象深かったのは、風邪とインフルエンザを分ける必要がないという項目だ。僕はずっとこの考えをしていた。室町時代でもインフルエンザを克服して人々は暮らしていたのに、いやそれにかかることで免疫を強くしていったのだと思うが、平成の世で、ことさらインフルエンザの脅威を強調する「魂胆」にうすうす気がついていた。特に福島の事故のあと、安全神話を金で買い続けて、国民を洗脳したのと同じ手を使っていることに気がついた。ほとんど製薬会社の陰謀で、役人まで実質支配しているのだろう。  僕の薬局には、調べたら絶対インフルエンザだろうなと言う人が時折やってくる。薬を出せば元気になってくれるからそれでいいと思っていたが、これからはもっと自信を持って対処できる。なんとなく僕も患者さんもアウトサイダーのような感じでいたから。やっていることが正しいとなったら今まで以上に勉強して精度を上げたい。