盆地でもないし、川も流れていないから、霧が発生するのは珍しい。だからちょっと霧がかかっただけで1日中話題になる。 5時に起きて駐車場の落ち葉を拾い集めたりしていたから、かすかに霧がかかっていたことは知っていた。ただその頃は、一日中話題になるほど霧が深くなるとは思ってもいなかった。もっとも僕は8時半から仕事をしているが、外の景色は普段と変わりなく遠くまでくっきりと見渡せていた。同じ牛窓でも条件により差があったのだろう。ある人は、島が見えなかったと言ったから、かなりのものだったのだろう。 水蒸気が原因の霧ならすぐ晴れるし、そんなに質が悪いものではない。ただ、現在この国を覆っている霧は当分晴れそうにない。力を持っている奴らが、何食わぬ顔をして、自分たちの利益を追求しやすくする構図が強化されている。耳に心地よい言葉を並べ、マスコミに連帯を促すような雰囲気作りをさせ、本来虐げられている人達が、よりによって対立すべき力ある奴らの補完物質に成り下がっている。ほんの少々を与えられ、命する奪われていることに気がつかない。今も毎時1000ベクレルの放射能をまき散らし、何らおとがめのない、いやそれどころかますます税金を公然と食いつぶす奴らと、なけなしの金でその日その日を生きている人達が、同じ方向を見、同じ船に乗っている。哀れなものだ。 この国を覆っている黒い霧が晴れたとき、一体どのくらい時代が後戻りしているのだろう。年寄りの欲望のために若者が、それも田舎の若者達が、命や財産を奪われたあの頃が再現されているのではないか。