薬剤師冥利

 本当に感謝されたが、僕は単なる仲介だから少々照れくさい。  先日このブログで紹介した例の琴の演奏会のこと。あるトラブルで岡山市から漢方薬を取りに来てくれている患者さんが2枚入場券を持って帰った。どなたかと一緒に行きたいというようなことを言っていたが、それは息子さんの義母に当たる人だった。その方は昔琴をやっていたのだが、最近痴呆が進んでいて、果たして喜んでくれるかどうか心配だったが、いざ演奏が始まると、思考の回路が繋がったのか、とても感動しながら聴いてくれたそうだ。いつもとは明らかに人格が違ったらしい。 患者さんの方もご自分は琴はやらないが、聴衆としてはベテランで、今回のコンサートのレベルがかなり高かったというようなことを言っていた。岡山であのレベルのものは珍しいとも言っていた。僕は正直閉口しながら聴いていたのだが、やはり好きな人は違うんだと、若干後ろめたくその喜びの報告を聞いていた。  ここまでの話はほとんど僕とは関係ないことだ。例の広島の女性がコンサートに出演出来たこと。彼女が高価なチケットを10枚も送ってきてくれたこと。そして演奏された方々が上手だったことに尽きる。ただ薬剤師として嬉しかったのは、過敏性腸症候群の方が新幹線でみんなと一緒にやってきて、舞台に立って堂々と演奏したこと。ここ数年、粘膜が弱って、人の中で咳き込むばかりしてコンサートなど行けなかった方が、咳一つせずに2時間コンサートを楽しめたことだ。両者がそれぞれの立場で楽しんで頂くのに寄与できたことは漢方薬を愛する薬剤師冥利に尽きる。