不謹慎

 戦いの火蓋は切られた。どうも最初の戦場はトイレの神様らしい。あの歌手のように可愛い女の子がトイレ掃除をして美しい女性に育つのならまだ夢のある話だが、僕がトイレにへばりついて、膨張して排水溝までぴったりとつまった尿取りパットを引き抜こうと格闘している姿は歌の詞にはならない。水分を吸ってゲル状に膨張すれば、管を完全に塞いでしまう。密着状態でいくら引っ張っても動かない。下手をして破れてしまえばもう手がないと思ったので、奥深く探ってみた。すると管の構造が何となく分かって、湾曲しているとおりに少しずつゲル状態のものを動かしてみた。するとある瞬間スッと抜けて取出せた。まるで穴の中に手をやって、大蛇に手に巻いた布をかませて引き抜いているテレビ番組の通りをしている自分がおかしかった。蛇なら出来ないが尿取りパットくらいなら出来る。 何度説明しても理解できないみたいだ。あたかもトイレットペーパーみたいにトイレに捨てるものと思いこんでいる。トイレがいやに長いなと思っていたが「大丈夫?」と問えば「大丈夫」と答えるから気にもとめていなかった。どうやら懸命に流れないものを流していたのだろう。何回も何回も水を流していたのだろう。その何回も何回もが息子に余分な作業をもたらすとは気がついて貰えない。昔から何故かトイレの詰まりは僕の仕事だし、何故か家族の中では一番結果を出しているのだ。  今日心配して、唯一人の従姉妹が訪ねてきてくれた。天性の明るさを備えた女性で彼女が母の相手をしていてくれる時間がとても有り難いプレゼントになった。連帯と言うおよそ介護などと関係ない言葉が浮かんだ。僕より人生経験に富んだ人のおおらかさが有り難い。何でも笑って取り組めれば楽になる。そんな素質を羨ましく思うしそんな素質に助けられることが幸運だ。戦いは始まったばかりだがこの歳でまだ親が健在だったことを感謝して、少しばかりまっとうな月日を送ってみようと思う。  よし、ブログの原稿が書けたからパチンコに行ってこよう!いやいやそんな不謹慎なことを考えたらいけない、夜が明けるのを待って玉野競輪だ!