うり二つ

その女性から連想して息子さんかなと推理するのが普通だが、今回に限ってそんな推理は必要なかった。見れば分かる。まるでうり二つなのだ。それどころか、男女の違いを乗り越えて声までそっくりだ。どちらが女性的な声をしているのか、男性的な声をしているのか分からないが、とにかくそっくりだった。おまけにしゃべり方の癖まで似ているから、ほとんど混乱しそうだ。  まるで同じではないか。輪郭を除いてそのまま内容物を移したようなものだ。 いつもはお嬢さんに連れてきてもらっていた女性が、息子さんに連れられてやって来た。 ここまででもうほとんど楽しませてもらったが、もう一つ実は感心したことがある。それは妹さんと同じくらい、いやそれ以上かもしれないが、とにかく母親にたいしてとても優しいのだ。もう立派な大人だから、照れ隠しにでも冷たく接する方がよくあるパターンだと思うが、二人の場合は全然違う。母親を心底、それも終始いたわる。決して否定的な言葉をつかわないし、間違っても命令口調になったりしない。おおらかに笑い、優しく諭すばかりだ。これだけ自然体で母親をいたわれればどちらも幸せだろう。  田舎だからだろう、いや日本全国同じかもしれないが、老人ばかりが目に付く。孤独を伺わせる老人も目立つ。明日がきっと今日より幸せな日であるとは考えられないように皺を刻み、明日がきっと今日より健康であるとは考えられないようにシミを作っている。娘と息子が母親に寄り添い暮らす家が、幸せだとか健康だとかに見放されるはずがないと思った。ものはいつでも離れていくが、心は決して離れては行かないから。