迂闊

 迂闊だった。ある方の漢方相談に長い時間を費やしたら、終わってから肩のこりを強く感じた。いつも手元に置いてある塗るとスッとする肩こり薬を早速肩や首に塗りたくった。そのうち患部が冷えて楽になるから一時肩こりは忘れている。肩こりも忘れているが、その薬を塗ったことも忘れていた。何かの拍子に目が痒くなったので、さっきその肩こりのジェルを塗りたくった手で片方の目をこすってしまった。そして目を開けるとしみるわしみるわ(これは標準語だろうか、刺激が強いときに使う表現、もっと言うなら岡山弁では走ると表現する)目を開けておれない。その上に何を勘違いしたのか、新製品で目に刺激の強い目薬が届いたばっかりだったので、良い機会だと思って使ってみた。清涼感を売り物にした目薬なのだが、差すとすぐに目薬の清涼感とさっきまでの刺激の相乗作用で、走るわ、走るわ、涙まで出だした。そこで初めて、原因が結膜にあるのではなく、瞼を肩こり薬を塗った手で触ったことだと気がついた。そこで洗面所に行き顔を洗うと次第に刺激感が無くなった。手にぬるっとした感覚があったので、まだ十分皮膚の上には塗り薬が残っていたのだと認識した。   迂闊だった。漢方問屋の専務さんが今日来て「体調は回復しましたか?」と尋ねたので、いつも低空飛行なのに今更と思い何のことか尋ねたら、先週風邪をひいたことをブログで読んだと言った。運良く数時間で治ったのだが、その時に漢方薬で治されたんですかと尋ねられたので、現代薬で治したと答えた。若夫婦が作っている風邪薬を2回飲んだだけだ。後は贅沢な栄養剤を飲んだだけだ。こんな時は「○○湯」を飲んだらすぐに治ったなんて答えていたら格があがるのに、つい風邪の時にはヤマト薬局は現代薬を使うから正直に答えてしまった。何を用いても早く治ればいいと言うのがヤマト薬局のモットーだから、漢方薬にはこだわらない。なにでも漢方薬で治すなんて言えば格調は上がっても患者さんが喜ばなければ何にもならない。  迂闊だった。煎じ薬を作るための土瓶のパンフレットがないかとある方に電話で尋ねられた。沢山の方に煎じ薬を飲んで頂いているが、最初に僕はやかんでも鍋でも何でもいい、材質もなにでもいいと言っている。効果に差が出ることを証明できなかったと何かで読んだことがあるからだ。だからその方にも家にある何でもいいですよと答えて、敢えて土瓶を使う必要がない理由も教えてあげた。その方は理解してくれて、工夫してみますと言った。黙っていれば土瓶が売れたのに自然に口から出てしまう。土瓶の製造業者さんごめんなさい。  今日は迂闊3兄弟。