朝一番

 若者が朝一番に飛び込んできて、喉がイガイガするからトローチをくれという。そのほかの症状を尋ねたら何も無いという。9時過ぎには病院に行くとも言っていた。病院へ行くまでの30分のためにトローチを取りに来たのかと呆れたが、まさにその通りらしい。 何となくこのやりとりに違和感を感じた。後30分たてば病院に行くのだったら、30分くらい何もしなくたって同じではないか。あるいは喉がイガイがする程度の風邪くらい自分で薬を買って治せよと言いたかった。どうやら生まれてから病院代が無料の期間が長かったから、地力で何かを治すという習慣を身につけていない世代が増殖しているように見える。どんな些細な症状も病院に行って優しく手当てしてもらわなければ収まらないらしい。かかる病院によるが、どうせ抗生物質、去痰剤、風邪薬、下手をすれば吸入剤などが総動員されるから、かなりの金額になる。僕のところなら風邪くらい病院と遜色なく治すことが出来るし、安いし、何にもまして数分ですむ。たかが風邪くらいでこんなに国に税金を使わせてどうするのだろうと呆れる。国の財政が破綻するのも仕方がない。企業や政治家だけでなく、庶民までがよってたかって税金を奪い合っているのだから。  夕一番に「○○さんが熱が出て関節が痛がっているから薬を作ってあげて」とお使いの青年がやってきた。○○さんは僕の同級生で関節が痛いと言うことはかなりの高熱の筈だ。その青年に電話で頼んできたらしい。たった喉がイガイガするだけの若者が病院に行き、高熱で関節が痛いのが薬局に来る。どう見ても逆転しているようだがこれが現実なのだ。これから心も体も鍛えて世の中を引っ張っていかなければならないような青年達のこの気概のなさ。それに引き替えもう引退しても良さそうな世代の人間の踏ん張り。まさに対照的だ。若者のように大切に育てられたわけでもなく、老人のように大切にされているわけでもなく、中間世代は甘え知らずで痛ましい。