働き蟻

 あなたの生活でいったい何が欠けているのと問うてみたいような著名な人達の自殺が相次いでいる。凡人が考えられないような不足感や、もめ事が著名というバリアで隠されているのだろうか。  著名人の生活を案じるほどの余裕も興味もないが、得られないものが大きいのか、失うものが大きいのか、庶民と同列には扱えないだろう。ほんの少しの収入や、ほんの少しの友情で救うことが出来たかもしれない命に比べれば、高くつく人達の同じ手段に違和感を感じる。  忙しそうに動き回る働き蟻の実は2割はさぼっていて、その2割を排除すると、残りの集団の中の2割が又さぼり出すのだそうだ。そんなことまでが遺伝子の中にインプットされているのかと思うと興味深いが、その遺伝子を受け継いでいない有能で生真面目な人は、2割に属する勇気を持てば死に急ぐこともなかったろうに。いったい何に追いつめられたのか知らないが、捨てるものを全部捨てて身軽にはなれなかったのだろうか。取り返しがつくものなんか捨てれるだけ捨てればいい。元々なくてもいいようなものだから。取り返しがつかない唯一のものを捨てる取り返しがつかないことをして、残されたものが取り返しがつくと思ったら大間違いだ。 地球に巣くう頭の黒い強欲な蟻どもが、行列を成して自滅への道を歩き続けている。どうせならとことん付き合って、最期まで見届ければ良かったのに。捨てるものを無くした 最強の語り部として。