北の国の貴女に

 僕は子育てをするに当たって、一つだけ原則を持っていました。それは決して立ちはだからないと言うことです。僕は命にかかわること以外で子供を怒ったことはありませんし、 子供に何かしろと言ったこともありません。子供がやりたいと言ったことだけを援助することに徹しました。だから我が家の子は、勉強を余りせずに、スポーツばっかりしていました。結婚もしろとも言ったこともないし、結婚が決まったからと言っておめでとうとも言っていません。結婚なんてしようと思えば誰だって出来ます。そんな簡単なことがおめでとうの対象とは思えないのです。寧ろ人生で何をやり遂げるか、いや、そんな大げさなことではなく、少しでも人の役に立てることを優先して欲しいと思っています。その結果の人生にたいして、いい人生だったねとおめでとうの言葉を心からかけてやることは出来ます。勿論その時は僕はこの世にはいませんから、最終的なおめでとうは言えませんが、途中経過は見守ることが出来ます。そしてそこでも又、やはり陰の応援者でしかないのです。成人した子供たちにああしろこうしろは禁句だと思います。  あなたは過敏性腸症候群を克服してアメリカ留学までした方です。僕には経験がないから分かりませんが、恐らく得たものはかなり大きなものがあるのではないですか。その得たものを如何に他者に還元できるかが、あなたのこれからの人生の最重要課題で、それ以外のものであなたが縛られる事はありません。家族や学校、その他で色々確執があると思いますが、それはあなたをもう一段寛容で勇敢にしてくれるために用意されたものです。 偶然あなたのために存在してくれた多くの素晴らしい人格を持った人達です。恐らくどの方もあなたの到底及ばない長所を持っている方ばかりです。勇敢と臆病、寛容と不寛容、混在した人格を持っているのがごく普通の人です。あなたのなかにも僕の中にも、級友や、教授、家族、すれ違う人達の中にも・・・みんな同じです。  僕もこうして何十年も生きてくると、人生そんなに力む必要はないとよーく分かったのです。今なら、ごく普通の心温まる小さな日常の積み重ねで人生って充分なんだと言えます。 僕はあなたが多くの言葉をいつも頭の中にため込んで青春を蛇行しながら生きていることをとても嬉しく思います。溢れるネガティブな言葉、間違った判断、不本意な結果など、あなたの人生で使い捨てにするものなど何もありません。悩んで悩んで悩みぬく特権を愉しんでください。僕などもう悩む体力もテーマもないのですから。 ヤマト薬局