機関誌

 もうずいぶんと長い間、毎月ある個人医院が機関誌を送ってくださる。医学的な内容ももちろんだが、医師の雑感を楽しみに読ませてもらっている。温厚だがちゃんと言いたいことは言っている。権威があるから堂々と意見を述べているのだと推測できる。さもなければ医院の経営にもマイナス要因になってしまうだろうから、それをはねのける自信があるのだろう。 今月号では少し感情がむき出しになっていた。抑えても隠せない怒りが行間ににじみ出ていた。怒りの対象は国の医療行政だから、立場によって客観性が保てれるかどうか疑問だが、その内容よりも、怒っているその医師の姿が想像され、如何にも人間的で親しみを覚えた。あまりにも完成された人格や、評論家のように自説に過信気味な人間は息苦しい。どこか弱点や、欠点を持ち、懸命に隠しながら生活している人の方が本物らしくていい。完全武装されても、とりつく島がなければ物理的な距離を遙かに越えて異次元の生き物になってしまう。出来ればこちらがちょっと優越感を持てるほどの人間味を持ってもらうのがいい。  停滞した経済を立て直すために、金をくれたり、安くしたり補助するからと盛んに消費を促されるが、使い切った後に消費税でも上げられたら元も子もない。環境に配慮することなどどうでもいいような何でもありに乗せられまいと、意地でも壊れるまで使ってやろうとへそ曲がりが顔を出す。僕には権威がないから余りえらそうなことは言わず、ひたすら自分を守るくらいしかできないが、偉い人のうまい話は「聞かんし」くらいは出来る。