未来

 ゆっくりとした空気の中で仕事をしたいから、来店者でちょっと時間がかかりそうな人にはお茶を出す。幸運なことに当方を利用してくれる人は良い人が多いので、不愉快な事を経験することは滅多にない。どなたとも心地よく仕事をさせてもらっている。面白いことに、用事が済んで、帰るときの態度が世代間で全く異なっている。  僕より一回り上の世代、戦前世代と言ってもいいかもしれないが、その方達、特に女性は、湯飲みをほとんどの方がテーブルからカウンター、あるいは僕の相談机(奥まったところにある)まで運んでくれる。勿論お礼を言いながら。僕ら世代、あるいはちょっと下の世代は、お礼を言いながら、ちょっとテーブルの上を片づける。勿論この方々もお礼を言う。それより下はほとんどお茶に関しての反応はない。  世代間の評価をしているのではない。僕はどの世代の人も好きだ。肌に染みついたものが違うだけなのだ。どの世代の人も善人が多い。それで十分だ。その時代時代で精一杯がいい。昔気質も堅苦しいし、ほどほどで十分人格は伝わってくる。山肌で見まもる松の木さえも、烏も鳶も区別しない。カアカアと鳴こうがヒューヒュルルと鳴こうが岩を割って未来が転がり落ちることはないのだから。