頭寒足熱

 頭寒足熱。昔の人が言った言葉だが、現代でも当てはまる的を得た表現だ。心臓はまず上に向かって血液を送り出す。だから首から上や上半身は血液の循環がよい。逆に下半身は、足の筋肉ポンプで血液を心臓まで戻さなければならない。だからどうしても血液循環が悪い。その結果、上半身に血液が多い状態になり、下半身に足りない状態になる。頭の中は血液が巡りすぎるから、いらないことばかり考えて、イライラしたり、不安になったりで、感情のコントロールが出来にくくなる。充血状態だから炎症も起こりやすくなる。  社会の構造も同じことが言える。心臓で生まれた富や情報はまず上流へ流れ、そこから下流に拡散する。ほんの小さな集団である首から上には、富も情報もあふれかえり、パンク状態になる。適正な量なら上手く循環するのだが、集約しすぎてのぼせ状態になり、やがてくも膜下出血を起こす。およそ富や情報は理性なんぞではコントロールできない魅力があるのだろう。なかなか満腹中枢を満たすことは出来ないようだ。  下流に位置する人達は、届かない血液に筋肉を養ってもらうことも出来ず、やせた足をして日雇いだ、派遣だとこき使われる。脳を循環する血液をほんの少々分けてもらうだけで、立ち上がって又、歩くことが出来るのに。  人間の身体も、社会のシステムも、頭寒足熱がいい。首から上で働く人は、多くを抱えず足腰を踏ん張って働く人に分け与えるべきだ。いくら優秀な能力を持っていても、足が無ければ牛一頭、魚一匹、キャベツ一つ育てたり獲ったり出来ないのだから。