荒野

 毎日、症例報告をしているある漢方の会社には、以下のような文章を送った。だけど、僕のブログにはその下の文章を載せる。下の文章を載せてくれる勇気がある会社はないだろう。当たり障りがない文章では言いたことは伝わらない。

 80歳代の女性同士が共同生活をしている。2人とも夜寝ているときにこむら返りが相当激しく来る。当然病院でツムラ漢方薬をもらって飲んでいるが効かない。2人の女性にはある漢方薬を作った。下半身の血流を改善する薬だ。単に改善と言ってもそんなに簡単ではない。心臓のポンプ力が上がらないとダメだし、静脈と言う溝みたいな血管を掃除しなければならない。そのためには気持ちが前向きでなければならない。そんな漢方薬を二人に送って飲んでもらったら、案の定こむら返りが改善し始めて喜んでくれている。ツムラの何番かを飲むのでは、虫歯の人が痛み止めを毎日飲んでいるのと同じことだ。決して虫歯は治るわけでもなくむしろ進行していく。血流を回復しないでこむら返りの薬で満足していたら、いずれ原因となっている循環器系の病気が取り返しつかなくなってくる。

 80歳代の女性同士が共同生活をしている。2人とも夜寝ているときにこむら返りが相当激しく来る。当然病院でツムラ漢方薬をもらって飲んでいるが効かない。こむら返り(牛窓弁ではひきつけ)には今や第一選択になりつつある漢方薬だが、僕が30年くらい前に漢方薬の勉強を始めて、医者に処方箋をきってくれるように頼みに行ったときにはずいぶんと馬鹿にされた。内容を聞く前に漢方薬と言っただけでそこから先は話すチャンスも与えられなかった。それが今やどうだ、自分達がさぞ漢方薬でも中心のように振舞って、分かりもしないのに漢方薬を処方している。恐らく製薬会社のセールスが「先生、これこれにはこの番号の漢方薬を使ってください」などとお願いしているのが落ちだ。ほとんどの医者がツムラ漢方薬を使っているが、それは漢方薬をやっている全国の薬局には救いだ。彼らがツムラ漢方薬を使っている間は、薬局には追いつけない。ただし薬局には、自らカリスマを標榜して、漢方薬を「さばく」業者も多いから気をつけたほうがいい。  さて、2人の女性にはある漢方薬を作った。下半身の血流を改善する薬だ。単に改善と言ってもそんなに簡単ではない。心臓のポンプ力が上がらないとダメだし、静脈と言う溝みたいな血管を掃除しなければならない。そのためには気持ちが前向きでなければならない。そんな漢方薬を二人に送って飲んでもらったら、案の定こむら返りが改善し始めて喜んでくれている。ツムラの何番かを飲むのでは、虫歯の人が痛み止めを毎日飲んでいるのと同じことだ。決して虫歯は治るわけでもなくむしろ進行していく。血流を回復しないでこむら返りの薬で満足していたら、いずれ原因となっている循環器系の病気が取り返しつかなくなってくる。  単にこむら返りの薬でも、僕はこのように考えて薬を作る。だからツムラの何番かを1年以上無駄に飲んでいる人でも効く。漢方薬の原料となる薬草不足が現実味を帯びている今、必要もないのにセールスの接待に乗って漢方薬を処方したり、テレビでいとも簡単に病気が治るように宣伝し、当たるも八卦あたらぬも八卦のドラッグや、カリスマ薬局の法外な値段・・・恐らく世のあらゆる他の業種と同じようなことが起こっているのだろう。それは道徳の劣化、経済優先が行き着いた精神の荒野だ。自分が属す社会に居心地の悪さを感じながら暮らしている人は多いのではないかと思う。