不安

 季節の変わり目で、体調や心を乱している人が多く、悲鳴が伝わってくる。もれなく元気になって欲しいと心から思うが、自分の非力さがうらめしい。  見渡せば、何の健康不安もないがごとく人々は行き来する。自分だけが選ばれてこんなに不調なのかと、独り涙する。不運を嘆いて何かのせいにすれば心はつかの間の安息を得られるが、鏡に映る自分の姿をごまかすことは出来ない。テーブルの上に重ねた不安は天井に届き、カーテンを揺らして吹き込む風に飛ばされる。気を強く持って、足を踏ん張り仁王のように立ちはだかっても、島の向こう側に落ちる夕陽を1秒たりとも引き留めることは出来ない。  僕らは知的動物。勇敢には出来ていない。不安こそが命の綱。不安こそが生産。不安こそが希望。軟弱にして頼りない心にこそ宿る魂。不器用な日没に感謝。