突然の訪問者

 土曜日には、遠路よく来てくれたね。といっても、あなたは珍しく県内の人だからその気になれば毎日だってこれますね。あの日僕は、あなたも見ていたように解熱薬と強心薬と栄養剤を飲んで何とか1時間は持ったのですが、あれが限界でした。結局あの後2日間ねっぱなしでした。でもあなたと少なくとも話が出来たのは、僕にとっては幸運でした。メールではあなたのことをほんの少ししか理解していませんでした。でもあなたにあって俄然、僕はやる気を起こしていますよ。あなたのようなステキな子がお腹なんかで人生を諦めてはいけません。僕が出来ることを今考えています。まず僕が早く元気になって、あなたのために時間も体力も知恵も経験も使えるようにしなければなりません。僕はあなたが、いつか舞台の上で歌い踊る姿を見たい。きっと、あなたのご両親も同じでしょう。  僕以上に娘と話すことが出来たのはあなたにもよかったかな。娘はあなたが帰った後、とてもいい子でかわいい子と表現していましたよ。まじめすぎるのだろうと僕があなたに尋ねたとき、あなたはうなづいていましたね。見ていてすぐに分かります。家にいて悶々としていても治りませんよ。出れるようになってきたと言っていたから、入試までどんどん外出しよう。あなたが苦手としているところに。僕もそのあたりを考えてみますね。帰る時に、あなたが「夢を諦めない」と強く言ってくれたのはとてもうれしかった。体調がとても悪く、あなたに何を言ったか今思い出そうとしても思い出せないのです。だけどいつものように全部本心しか語っていないと思います。  あなたが帰った後、妻が「もう一人子供がいてもよかったね」と言いました。何を思ったのか尋ねませんでしたが、もう一人いたらあなたのような年代だろうし、あなたに対して幸せになって欲しいと思う親心をまた体験できると思ったのでしょう。  作戦を練ってうまく目的を達成しようね。正面突破だけが人生ではないですよ。