千差万別

 僕にはどうしても理解できない。どうして過敏性腸症候群で内科にかかって、その後、耳鼻科や脳外にかからなければならないのか。内科で何も発見できなければ、耳鼻科に行って、それでも原因が分からなければ脳外を紹介され。脳外でだめだったら次は何処に紹介されていたのだろうか。恐らく働き者の優しいお母さんは、お子さんたちのために懸命に解決策を捜したに違いない。でも、さすがに脳外はお母さん自身も怪訝に思ったのだろう。「我が子が脳がおかしいように思う?」 と尋ねたら、他になにも悪いところはないしスポーツマンらしい。ずっと以前からヤマト薬局のチラシを見ていていつか訪ねてみようと思っていたらしいが、最終的には脳外を紹介されたことが僕の所に来る決心をさせたみたいだ。 エビのように体を折り曲げて痛みに耐える。毎日吐く。兄弟で代表的な症状は違うがどちらも明らかに心のトラブルだ。聞けば、生一本なところがあって真面目を絵に描いたような少年達らしい。すごい長所だ。そんな彼らが能力を発揮できるところを与えられたらどれだけ活躍するだろう。ところが学校の先生に、怠けているなんて言われたものなら教室に居場所はない。もしそうなったら誰が責任をとるのだろう。教師も無知なら許されるのか。
 何がきっかけで発症するか、それこそ千差万別だ。大きくは分けれるのだろうが、個性の数だけ原因もある。それに応じて、治し方も千差万別だ。公式みたいなものが作りにくくてまるで手作業の町工場だ。公式らしきものを見つけて大きな企業は薬を作ったが、どうやら又空振りではないか。実際に処方されて飲んでいる人は未だ一人も来ない。それとも患者さんの方がもう諦めてしまっているのか。お腹などで生活の質を下げないで欲しいと思うが、当人にとってはお腹などと言うレベルではなく、お腹が全てなのだ。これさえなければと言うものに僕も長い年月苦しめられた。これさえなければと言うもので謙遜も覚えたし、ほんの少しだけ他人の痛みも理解できるようになった。やがて、これさえなければと言うものが無くなった時、すでにそれだけではとてもすまない年齢に達していた。 結局はいつもどこかが不健康に生きてきた。大なり小なり多くの人がそうだろう。心か身体の違いはあっても、いつもどこかを壊して、どこかを修復していた。人の自然治癒力って素晴らしいなと感心の連続だった。ただし、そろそろ釣瓶が底に届きだしたような気配は感じられるが。手を伸ばせば水面に届きそうな若者は自信を持って。あなた達に治らないトラブルなんかあるものか。