涙でさよならといった貴女に

 もしも僕が30年前に貴女とすれ違っていたら、貴女の清楚な姿に感動して雲を追いかけたかもしれない。もしも30年前、貴女の声を聞いていたら、風に向かって走りだしたかもしれない もしも30年前貴女に会っていたら、鳥のさえずりを探して森の中に分け入ったかもしれない もしも30年前に貴女と握手をしていたら 道端で倒れている浮浪者に手を差し伸べたかもしれない もしも30年前に貴女の黒髪の香をかいでいたら、砂浜に寄せる波に心を洗われていたかもしれない 貴女に会えてよかったです。幸せになって下さい。僕に何が出来るか分かりません。でも僕に出来ることなら何でもしてあげようと思いました。30年前の青年がそう言いました。貴女とまるで正反対の、いや、どこか似ている青年が言いました。