途中

 隣の町から相談に来てくれたその女性が、僕の漢方薬で症状が軽減されたら是非言いたいことがあった。初めて相談に来てくれたとき、応対中僕はとても心地よかったのだ。その理由は自分でもすぐに分かった。笑顔がとてもいいのだ。と言うより、もし笑い方と言うものがあったら教科書にしたらいいと思うほどの笑顔なのだ。勿論笑顔が素敵でない人なんていない。いかついお兄ちゃんが、見かけに反してにこっとしたりすると、一本とられたと言うくらい印象の逆転を起こす。その女性は、顔をくしゃくしゃにして笑うのだ。笑いに途中がない。最後まで笑いきる感じだ。おそらくかなり良質のホルモンが分泌して、免疫力は相当アップするのではないかと思う。「君の笑顔はとても素敵ですね」と言いたかったのだ。  むくみと極度の便秘で相談に来てくれたのだが、2週間でかなり改善して喜んでくれた。むくみはほとんど完治に近く、日中2回しか行かなかったおしっこも、本人曰く、頻尿くらい行くようになったこと、また、センナ200ccで、痛みを伴った下痢みたいな大便だったのが、50ccで自然に気持ちよくでだしたと例の笑顔で報告してくれた。帰りがけに、「先生に言ってなかったんですが、実は午後になるとガスがおなかにたまってゴロゴロして仕事どころではなかったんです。それが漢方薬を飲み始めてなくなったんです。すごく嬉しい」と言った。彼女にとっては、予期せぬ副産物なので帰りがけに伝える程度の症状だったのかもしれないけれど、まさにその症状で困っている人が沢山いる。僕は薬局であまり難しい話はしないから、彼女は自分のトラブルが何か病名は知らないと思う。知らないほうがよいことも多いのだ。ただただ困っていただけなのだ。僕は又とてもよい勉強をさせてもらった。過敏性腸症候群の薬に公式はないと思っている。人それぞれが持っている欠点を少しでも正すしかないのではないかと思っている。まさに彼女がそれを教えてくれた。僕が頼まれたのは、ただむくみを取ってくださいだけだったのだから。その為に彼女の体質的な欠点の薬を出しただけなのだから。  彼女は栄町ヤマト薬局を気に入ってくれたみたいで、これからは2週間薬を持って帰るのではなく、1週間分ずつ持って帰るらしい。僕に1週間の報告をして、その都度処方を考えさせるらしい。僕も大歓迎だ。1週間に一度あの「途中のない笑顔」が見れるのだから。あの伝えたい言葉は次回言おうと思っている。