赤とんぼ

 不覚にも、夕食後台所の床の上で眠っていた。丁度2時間くらい寝ていたことになる。この1ヶ月、自分が担当していない薬局業務をなんとかこなそうと緊張の連続だったが、今日薬剤師さんが又担当してくれることになり、やっと解放された。その安堵感なのだろう、戦いのモードから一気に休息のモードに変わったみたいだ。昨日自分でも頑張りがきかなくなったのを自覚していた。ひょっとしたら倒れるかもしれないなどと本気で思った。あまり経験したことのない不快感にしばしば襲われていたから。これで倒れるのは免れそうだ。今日の日中は早速読めなかった情報誌を読んだ。机の上に毎日積み重なっていくのが気になっていた。僕と縁が出来た方々の健康の為に役立つ情報が、どんな書物の片隅に埋もれているかもしれない。それをもし見逃していたとしたら、痛恨の極みだ。だから僕はひたすら活字を追う。それこそが皆さんと僕自信をも守ってくれる地道な方法だ。やっと、その時間が持てた。日曜日持ち歩く情報誌が少し減りそうだ。  夕方迷い込んだ赤とんぼが、頭上の蛍光灯の回りを羽音を響かせながら飛んでいる。季節は確実に移っているのに、僕の中で時間はひたすら消費するものだけでしか存在し得なかった。時間に価値はなく、漂白された人生を川に流すが如く空しく感じられていた。空も見上げなかったし、空気は風を作らなかった。ただひたすらに飢えたカラスと朝を競っていた。