説教

 僕はフェリーファンなのに、その態度はいけないな。なるべく利用するように心がけている人間にあの態度はいただけない。いやいや、誰にもダメだと思う。  高松発17時5分だと、日没後だから、景色はほとんど楽しめない。しかし、3ヶ月の応援部隊として来日した第3陣の女性達を丸亀城の紅葉を見に連れて行った帰りに、フェリーに乗せてあげたくて、あえて香川県を横断して高松まで行った。便数は減るし、発着場も変わるしで、まだ僕は慣れていない。新しい発着場になって2回目だ。以前なら、真正面に乗るべき船を見ながら待てるのだが、今は壁で視界をふさがれた駐車場で待つことになる。その上、同じ駐車場で、宇野行きの人も、小豆島行きの人も待つので果たして待ち方が正しいのか心配になる。  指示された所に今日も車を止めて待っていたのだが、出発の時間が迫っているのに乗船を待っている車の半分くらいしか動かない。そして定刻の17時5分が来たときに放送で「17時5分発の宇野行きが出発します」と切符売り場からの放送があった。前に10台くらい待っていたが、てっきり僕はその車が小豆島行きを待っているものだと思った。僕は宇野行きの車の列に並んでいたつもりだったのだが、実は小豆島行きに並んでしまったのだと判断した。そこで慌てた。何故ならかの国の女性達には門限があるから、それを破ると志半ばにして帰国させられる。家族の期待を背負ってやってきている彼女達の夢を破っては申し訳ない。もしフェリーに乗れなければ、2時間半かけて瀬戸大橋をぶっ飛ばして帰らなければならない。  僕は列から抜け出して、先頭付近まで車を走らせた。そこには車を誘導する人がいることを知っていたから。すると誘導のおじさんが、如何にも僕が割り込みを図ったように見えたらしくて、僕に説教をした。放送の係りが定時に出航の宣言をしたけれど、現場ではまだ車が乗り込めないでいた。今まで20回くらいは利用したことがあるが、出航が遅れるなんてことは初めてだった。だから僕は乗るべき船ではなかったと考えてしまったのだ。  自分たちのほうが悪いことに結局は気づきもしない人間の為に、フェリー好きを変えるつもりはない。同行した女性たちが、今回はほとんど子供がいる世代なのだが、まるで童心に返ったように振舞うのを見たら、些細な不快感は忘れることは簡単だ。ただ、いいスタッフを雇わないと企業は潰れる。規模の大小は関係ない。

https://www.youtube.com/watch?v=fJZB5mDTyYQ