第8回さぬきの鼓響

 今日も香川県の和太鼓の実力を見せ付けられた一日だった。「第8回さぬきの鼓響」を聴きに、三豊市まで行って来た。瀬戸大橋を利用すれば1時間半でいけるから、地図上の距離と実感はかなり違う。地図上ではあそこまで行かないといけないのかという印象だったが、日本語が特異なかの国の女性と妻がずっと話し続けていてくれたので、あっという間に着いた感じだ。県北に行くより随分と近い。今日は7つのグループが出演したのだけれど、その中で3つだけ取り上げる。  「和太鼓集団 夢幻の会」は小学生から高校生が主体のグループだけれど、その実力は周知の事実で、曲が始まる前に拍手が起こったのはこのチームだけだった。もっとも僕が最初に拍手して仕掛けたのだけれど、あっという間に会場から拍手が巻き起こったのは皆実力を知っているからだ。小学低学年のかわいらしい子が鐘を踊りながら打つ姿はなんとも言えず心を優しくしてくれるが、なんとその女の子が今日は太鼓3つを並べて、腕を交差しながら打つようなアクロバットな技術も身につけていた。立派な太鼓打ちになっていたのだ。まだ小学生にしか見えないのだけれど、着実に、と言うより奇跡に近いスピードで上達していた。指導者の力が並大抵ではないのだろう。  2つ目のグループは「大野原龍王太鼓」だ。このグループの一番の見せ所は、鬼の面をかぶった打ち手が最後に大太鼓の上にまたがり、長い撥で打つところだ。外国人に一番受ける場面だ。案の定、今日一緒に行った、かの国の女性も食い入るように見て、大きな拍手を惜しまなかった。単なるパフォーマンスならあそこまでの感動は与えられないだろう。太鼓の技術もどんどん上達していて、パフォーマンスとの相乗効果で、今では香川県の和太鼓の大会では欠かせないものになっている。  そして今日出かけていってよかったとつくづく思わせてもらった団体が、愛知県大治町から来たゲストの「大治太鼓 尾張一座」だ。初めて見た団だが、毎年10回以上は確実に和太鼓のコンサートに行っている僕が、今まで聴いたグループの中でトップクラスの実力だと感じた。なんと300年前から続いている伝統芸能に、現代のエキスを加えたもので、圧巻だった。とりを勤めたのだけれど、それまでおとなしく礼儀正しく聞いていた聴衆が、彼らの舞台になってからは惜しみない声援を送り始めた。  人の心を打つようなものが少なくなった現代に、貴重な文化の担い手としての和太鼓奏者達の存在は大きいと思う。