もったいない

 ある女性が、6月に留学の為に出発することになった。最近は漢方薬を送っていないが、時々よこすメールが、どんどん明るいものに変わってきていることに気が付いていた。過去のトラウマから脱出するのに少し時間を要したが、今が過去を引きずるのではなく未来を引き寄せる瞬間だと気が付いてくれたのかもしれない。今を克服するにつれ、やりたいことが段々形になっていったみたいだ。散弾銃みたいな文章が、段々ライフルみたいに照準を合わせた文章になっていった。その変化の過程に関われたことが嬉しい。  実は僕が関わった過敏性腸症候群の方で留学する人は意外と多いのだ。学校や会社におれなくなった人達が、このトラブルを克服して、以前より大きな羽をはやして大きく飛び立つことが珍しくないのだ。以前からの夢を叶えたのか、新たな展開にかけようとしているのか分からないが、勇気ある1歩を踏み出す。青春の一時期に失ったものを、取りかえして余るほどの旅に出るのだ。あんなに臆病だった彼らや彼女らが、こんなに勇気を持っていたのかと驚かされる。  最近の僕の処方の特徴か、気が強くなってくれる人が多い。強いというと語弊があるが、ものに動じなくなるみたいだ。その結果、活動範囲が広がり、お腹のことを考えなくなるみたいだ。お腹のことなんかで青春や人生を棒に振るのはもったいない。もったいない、もったいないとエールを送っているが、その真意を理解してくれる人が増えた気がする。僕自身や、多くの人が克服した経験を生かさないのもこれまたもったいない。日本人特有の文化「もったいない」が救えるものが身近にいっぱいあることに気が付く。がむしゃらに自己を主張するのではなく、自分自身を本当に大切に出来れば必ず克服できる。