白線

遠く先を見つめて歩いてはこなかった 振り返りもしなかった 用意された道もなかったから 踏み外すことは簡単だったのに 勇気がなかったから 白線の内側を歩いてきた だからと言って振りかえることもしなかった 後悔するほど機会に恵まれなかったし 努力も才能もたかが知れていることはわかっていた ひたすらその日その日を懸命にごまかして生きていたのだ 価値ある人生は 考えないことで保証された 命の蓄えが底をつき始めた 何もかも持っていくか 何かを残すか そんなこと なににも影響しない うなぎ上りに上昇する寒暖計の目盛一つ下げることも出来ない 歓びが涙の海でおぼれている 悲しみは羽を得て 大空を舞う