生き物

 空高くカラスが、麓では鶏が、耳元では小鳥たちが、歓びの鳴き声で朝を告げる。人間も含めて恐らく夜明けは、天敵から生き延び、新しい1日を与えられた歓びなのだ。夜の闇は動物にとっては恐れだろう。人間にとっても嘗てはそうだった。幼い頃、2階で寝かされ、寝付かれない間に母が階下に降りていくと恐ろしくて大声を上げて泣いていた。だだ広い部屋に小さな電球一つの生活だったから、夜は恐ろしいものだったのだ。  家電が発達して、家の中は夜は暗くて恐ろしいものではなくなった。こうこうとまるで昼のように明るく室内を保つことも出来るし、音楽を流し、昼のように音の中に紛れることも出来る。夜はもはや暗くて深いものではなくなった。そういえば僕の子供達は夜を恐れたことはなかった。  夜は充電の時間でもある。戦いの神経を休め、命の補充をする時間でもある。夜がなければ動物は生きていけないだろう。頭の中を空っぽにして、重たい荷物を降ろし、心も体も弛緩させる。どうしてこんなに旨くできているのだろうと感心する。人間のためにすべて整えられているような錯覚をしてしまうが、本当は人間が気が遠くなるような時間をかけて地球に適応してきたのだ。人間のために自然があるのではなく、この自然の中で生きのびてきただけなのだ。この自然を破壊したら、人工の荒野の中で生きていけれるように又、変化をするのだろう。進化と呼べるのかどうか分からないが、変わらなければ生きていけないように人間が自ら地球を破壊している。人間様はどんな生き物になるのだろう。