迂闊にもこんなに素晴らしい気づきをくれたのに名前を憶えていない。小説や難しい文章を、もう何十年も読んだことがない人間だから、こんな失態をする。ただその気づきは是非皆さんと共有したいと思った。
数日前に、新聞に載っていた文章の中の言葉だ。新聞を読むことだけは欠かせないと潔癖な所があるから拾えた金言だろうが、「デジタル時計には、1分の間に何もない」
1分ごとに表示される時間の間に、実は無限の事象が起こっている。1秒もあれば多くのことが変化する。ただ、デジタル時計はそれ(秒と言う単位)を否定しする。この見事なまでの簡略化、消去は人の思考までその方に導いてしまう。その危険性を小説家か学者は訴えていた。
なるほどと滅茶苦茶腑に落ちた。最近の何となくぬぐい切れない不快さはそうした現代人の思考の流れを感じているからかもしれない。何となくすべてにわたって感じる違和感。もはや引き返せないと言う喪失感。70年に及ぶ人生を否定されるような空しさ。この流れが行き着くところの恐怖。
たった一つの言葉で与えられた気づき。それに抗うように生きてやろうという決意。大切なものを時代に迎合して捨てる必要はない。