殺し文句

 あたって砕けるほど大げさではないが、あたってみるものだ。
 もうかなりの年月使っている電子天秤が、プラグの接触が悪くなって、コードをある角度に伸ばしたときだけ使える。だから棚にコードを固定しているのだが、それでも掃除の度に外さなければならなくて、終わればまた同じ角度で固定する。そうした工夫で何年もやり過ごしてきたが、1週間くらい前から、そのピンポイントの角度に固定しても余程運がよくないと、電源が入らなくなった。時間に余裕があれば何回も挑戦すればいいのだが、ひょっと立て込んだ場合は危ない。
 そこで新しいアダプターを買い求めるために、インターネットで秤の会社を検索すると、もう年代物らしくて同じ製品は載っていない。そんな時には大型の電気屋さん。いわゆる量販店だ。行きつけのケーズデンキに古いアダプターを持って行った。広い店内で自力で探すなどと無駄なことをしたくなかったので、いや元から出来ないので、速攻で店員さんに依頼した。するとすぐに案内してくれて僕が持参したものと合致するだろうものを選んでくれた。僕は選んでくれたものが使えるかどうか、本体を持ってきていなかったので分からない。そこで店員さんにまた本体を持ってくると言うと「どれかが合いますよ」と答えた。その「どれかが」と言う意味が分からなかったのだが店員さんが選んでくれたアダプターには、ちゃんと6種類ものプラグが並んでいた。
 考えたものだなあと感心して、いや感激に近かったかな、喜ぶ僕に追い打ちをかける。「もし合わなかったら返品してください」この殺し文句を前回(蛍光灯のスイッチ)も言われた。だから今回もケーズデンキに行った。
 何を言っても応えてくれそうな大型店に駆逐された町の電気屋さんには悪いが、「こりゃあ勝てんわ」と思ってしまう。同じ小売店としての薬局も「こりゃあ勝てんわ」でどんどん減って、調剤薬局以外の薬局はほぼ消えた。
 時代の流れにかなり置いてきぼりを食っているが、時代の流れに助けられることは多い。むしろ時代の流れを作ったり堪能している人達より、無知であればあるほど助けられているのかもしれない。